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先任准教授
関 征央
秋田大学卒業
マイクロサージャリーの限界に挑む
2025年4月から、順天堂大学形成外科の先任准教授を拝命致しました関征央と申します。私は医学生の頃に再建外科を必要とする患者さんの役に立ちたいという思いから形成外科の道を志し、マイクロサージャリーの世界屈指の施設である東京大学医学部形成外科に入局致しました。そこでは、世界で初めての遊離皮弁移植術を成功させた波利井清紀先生の理念を受け継ぐ、多くの先生方から直接ご指導をいただきました。福島県立医科大学でマイクロサージャリーの根幹的な部分を指導して下さった故上田和毅先生、東京大学では、常に限界を超える手術を行い続けることの重要性と、リンパ浮腫治療に必要なスーパーマイクロサージャリー技術の神髄とを、光嶋勲先生からお教えいただきました。その後約10年勤務させていただいた聖マリアンナ医科大学では、手術のアイデア、繊細さ、美しさを追求することの重要性を梶川明義先生から教わり、その後、がん有明病院で国際的な再建外科医の矢野智之先生の元で、多くの乳房再建、リンパ浮腫治療、再建手術に携わってきました。そして現在、当科主任教授の水野博司先生のご指導の下、順天堂大学形成外科で、これまでの集大成ともいうべき、診療・手術・研究・教育を行えることが大変な喜びです。
形成外科では、他診療科の扱っている疾患によって、我々の再建の範囲も多彩に変化してきます。ここ順天堂大学では、まさに「外科の順天堂」の名にふさわしい、沢山のマイクロサージャリーが求められています。頭頸部がんセンターの一員としての頭頸部再建、乳腺センターの一員としての上肢リンパ浮腫や乳房再建、足の疾患センターの一員としての足再建や難治性潰瘍、産婦人科領域では下肢リンパ浮腫や骨盤周囲再建、整形外科領域では四肢やその他の軟部組織再建、そして肝移植における血管吻合等、マイクロサージャンとして求められている全てがここにあります。皆様と一緒に、マイクロサージャリーの限界に挑戦し、安全で正確な手術を提供すると同時に、より効果的で新しい治療法を追求し続けたいと思っています。


常にグローバルな視点で。日本から世界へ発信を。
形成外科では卓越した技術による繊細な手術を行います。特にマイクロサージャリーの分野では、その精度に限界はなく、時としてヒトの限界を超えるような高度な技術を要求されます。顕微鏡、手術機械、針糸等の開発により、現在は0.10mm径程度のリンパ管や静脈ですら、ヒトの手で吻合することが可能となりました。そして、現在進んでいるロボットマイクロサージャリーの発展は、私達が想像すらしていなかった新しい手術をも可能にするでしょう。
どんな激動の時代の中にあっても、私達の行動理念は、目の前の患者さんを救うことにあります。手術の成功に向けて、やるべきことは多く待ち構えており、どんな困難にも立ち向かう精神の鍛錬も必要になります。その支えとなるのは、常に仲間です。優れた指導者、医局の仲間、医局を超えた日本中の同士、そして世界中の外科医達です。ここ順天堂大学形成外科ではその全てがあり、水野博司先生のご方針によるグローバルな環境も整っています。
私達は、国際交流・国際学会への出席等を積極的に推奨しています。新たな世界を知り、それぞれの分野で世界最高峰の手術を行っているトップサージャン達や、最先端の研究を行う研究者達と出会うことは、自らを高めてくれる宝物になります。同時に、私達が日本で行っている新しい手技や術式を、世界に発信することがとても重要です。英語論文や国際的舞台で発表することで、医学の発展に貢献できる可能性が生まれます。先日参加した国際学会で、ある南米のマイクロサージャンから、「私がここにいるのはあなたのおかげです。10年前のあなたの論文を読み、その手術を行い、私は今ここで発表をできる程になりました。私だけではない、そんな外科医は沢山いる」と言われ、嬉しい気持ちもありましたが、逆に身の引き締まる思いでした。師匠達の背中はまだまだ遠い存在で、医学の発展の為に、より質の高い基礎研究・臨床研究を継続していくことの重要性を再認識致しました。
目の前の患者さん、そして将来出会う患者さん、そして世界中の患者さんのために、共に歩んでまいりましょう!